小曽戸先生の「霊枢」の邪気臓腑病形篇を読んでいたらこんな文章に出会いました。
「(略)これら三つの診断法をよく交えて診察できる医者を上工といいます。 上工は十人の患者を診察して、九人までは治せるものであります。 二つだけを使いこなせる医者を中工といいます。中工は十人中七人まで治せます。 一つだけできる医者を下工といいます。下工でも十人中六人までは治せるものでございます。」 ここでいう三つの診断は患者の脈・顔・皮膚の状態を診て行うものをいいます。 総合的に診断できる医者の治療は効果が高いということが書いてあるのですが、私が感動したのは原文を見たときです。原典にはこう記されています。 「能参合而行之者可為上工。上工十全九行。中工十全七行。下工十全六行。」 これを読んで私は感動したのです。中国語は分からないのですが、 「そうか!全というのは治せるという意味なんだ!」 治るというのは、全体を意味して、完全な形というのを意味している。 患者が「全」である状態であるということ目標にしている。 さらに、治療家が「治してやっている」という自信過剰になることを警告し、個々を大切にし、個々の「全」を全うするために、3つの診断法を用いて総合的に謙虚に治療せよという意味だろうと思いました。 やっぱり新年には良いものに出会えるのです。 とルンルンしていたのですが、ふと冷静になってみました。 そういえば、古典の大家と言われる先生でこんなこと言ってる先生は誰もいないな~?と ちょっと心配になり、原点を再確認してみました。 ガーン!!!!(本当にこんな音が聞こえましたよ!) 全然違うじゃん!「全」は全体が十の、という意味だったんですね。 新年早々、こんな勘違いをしているようでは、先が思いやられます。 が、古典を読むときは慎重に、慌てずに読めというお告げだと解釈することにしました。 勘違いでも、治療が何かということを考えられたのは大きな収穫といえるでしょう。 その人それぞれが「全」、であること。 漢字源によると全は 1.まったく、ぜんぶ、すっかり 2.欠けたところがない状態 3.かけることなく保つ 4.すべてをひとまとめにしたさま 「三方から集めて囲うかたち+工(工作)で、完全に囲って保存された細工物を示す。「欠けめなくそろえる」の意を含む。のち、下部は玉(=王)となる。 とあります。 診断も治療も総合的に、全体的に、早合点せず行うことを新年の決意としました。
by may-shinkyu
| 2007-01-11 12:13
| 東洋医学
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